「毎月もらっている給料の内訳がよくわからない」「実はもらえるはずの手当を見逃していない?」――保育士の給与には、基本給以外にさまざまな手当が含まれています。しかし、自分がどの手当の対象になっているのかを把握していない方は意外と多いです。
手当の種類を知っておくことは、今の待遇が適正かどうかを判断する材料になりますし、転職時の条件比較にも役立ちます。
この記事では、保育士が受け取れる手当の種類を国の制度から自治体独自の施策まで幅広く紹介します。知らないと損する制度もあるので、ぜひ最後までチェックしてください。

国の制度に基づく手当
まずは、国が制度として設けている手当の種類を見ていきましょう。これらは全国共通の仕組みで、園の規模や運営形態を問わず対象になり得るものです。
処遇改善手当(処遇改善加算)
保育士の給与アップを目的に国が設けた加算制度です。制度が再編され、現在は以下の3つの区分で運用されています。
- 区分1(基礎分):経験年数やキャリアパスの構築に応じた加算。全職員が対象で、園の平均経験年数に応じて加算率が変わる
- 区分2(賃金改善分):職員の賃金を直接改善するための加算。園は配分計画を策定する必要がある
- 区分3(質の向上分):キャリアアップ研修修了者に対する追加的な手当。副主任や専門リーダーには月額最大40,000円が支給される
地域手当
公定価格には地域の物価水準に応じた「地域区分」が設定されています。都市部ほど加算率が高くなるため、東京23区では最大20%の上乗せが行われます。地方と都市部で同じ仕事をしても給与差が出る理由の一つがこの地域手当です。
扶養手当
配偶者や子どもなどの扶養家族がいる場合に支給される手当です。公立保育園では条例に基づき金額が決まっており、私立でも多くの園で支給されています。
通勤手当
自宅から園までの通勤費を補助する手当です。公共交通機関の定期代を全額支給する園もあれば、上限額を設けている園もあります。求人選びの際には上限額を確認するのが大切です。
役職・職務に応じた手当
役職や担当する業務に応じて支給される手当です。
役職手当
主任保育士、副園長、園長などの管理職には、役職に応じた手当が支給されます。金額は園によって異なりますが、主任で月額1万〜3万円、園長で3万〜5万円程度が一般的です。
担任手当
クラス担任を持つ保育士に支給される手当です。園によって有無が異なりますが、月額数千円程度のところが多いです。
特殊業務手当
障がい児保育の担当や、病児保育など特殊な業務に携わる場合に支給されることがあります。
資格手当
保育士資格に加えて幼稚園教諭免許やその他の関連資格を持っている場合に支給される園もあります。資格取得のモチベーションにもなるポイントです。

勤務条件に応じた手当
勤務する時間帯やシフトによって支給される手当もあります。
早朝・延長保育手当
早朝保育(7:00前後)や延長保育(18:00以降)のシフトに入る場合に支給されることがあります。手当の有無や金額は園によりますが、1回あたり数百円〜千円程度が相場です。
夜勤手当
院内保育所やお泊り保育がある施設では、夜勤手当が支給されます。1回あたり3,000円〜8,000円程度が一般的で、月に数回の夜勤があれば収入に大きな影響を与えます。
休日出勤手当
土曜日や祝日に出勤した場合、割増賃金(基本給の1.35倍)が支給されるべきですが、振替休日で対応している園もあります。
住宅手当
一人暮らしの保育士に対して家賃の一部を補助する手当です。園独自で月額1万〜2万円を支給するところもあれば、自治体の家賃補助制度を活用するケースもあります。
自治体独自の支援制度
国の制度に加えて、各自治体が独自に保育士向けの支援策を設けているケースがあります。知らないともらい損ねてしまうので要チェックです。
保育士宿舎借り上げ支援事業(家賃補助)
自治体が園に対して保育士の家賃を補助する制度です。対象者は園が借り上げた住居に住む保育士で、月額最大82,000円の補助が受けられる地域もあります(東京都の一部区市町村など)。自己負担がほぼゼロになるケースも珍しくありません。
奨学金返済支援制度
保育士の資格取得のために奨学金を借りた方に対して、自治体が返済を一部肩代わりする制度です。千葉県や神奈川県など、導入する自治体が増えています。
就職準備金の貸付
新たに保育士として就職する方に対して、準備金を無利子で貸し付ける制度です。一定期間勤務すれば返済が免除されるケースが多いです。
保育士応援手当
一部の自治体では、保育士の定着支援として独自の手当(月額数千円〜数万円)を支給しています。お住まいの自治体のホームページで確認してみてください。

手当を最大限活用するためのアクション
制度を知っているだけでは意味がありません。実際に活用するためのアクションを起こしましょう。
- 給与明細を見直して、どの手当が支給されているか確認する
- 処遇改善手当の配分方法を園に確認する
- 勤務地の自治体サイトで独自の支援制度を調べる
- キャリアアップ研修のスケジュールを確認して申し込む
- 転職時には手当の内訳を含めた年収ベースで比較する
Q&A|保育士の手当に関するよくある質問
Q. パートやアルバイトでも手当はもらえますか?
手当の種類によります。処遇改善手当はパートにも支給される園が増えていますが、役職手当や住宅手当は対象外となることが多いです。応募前に確認しましょう。
Q. 処遇改善手当はいつもらえますか?
園によって支給方法が異なります。月々の給与に上乗せされるケースと、年度末にまとめて一時金として支給されるケースがあります。
Q. 家賃補助は正社員だけが対象ですか?
多くの場合は常勤(正社員)が対象ですが、自治体や園によってはパートも対象にしている場合があります。制度の詳細は勤務先の園か自治体に確認してください。
Q. 退職金はもらえますか?
公立保育園では条例に基づく退職金制度があります。私立の場合は、福祉医療機構の退職手当共済制度に加入している園であれば退職金が支給されます。求人票の「退職金制度あり」の記載を確認しましょう。
Q. 年度途中で入職しても処遇改善手当はもらえますか?
処遇改善加算は園に対して支給されるため、年度途中の入職でも対象になるケースがほとんどです。ただし、入職月からの日割り計算になる場合もあるので、園に確認しておきましょう。
Q. 家賃補助は異動や転園した場合にも継続されますか?
自治体の家賃補助は、その自治体の対象施設で働いていることが条件です。同じ自治体内で転園すれば継続できることが多いですが、別の自治体に引っ越す場合は転居先の制度を改めて確認する必要があります。
Q. 手当の金額が園によって違うのはなぜですか?
処遇改善加算は国から園に一括で支給され、個々の職員への配分は園に委ねられています。そのため、園の経営判断や配分方針によって、同じ制度でも受け取る金額に差が出るのです。今後は「見える化」が進むことで、配分の透明性は高まると見込まれています。
手当の種類別に見る年間の影響額
各手当がどのくらい年収に影響するのか、金額の目安をまとめておきます。
| 手当の種類 | 月額の目安 | 年間の影響額 |
|---|---|---|
| 処遇改善手当(区分3・副主任) | 最大40,000円 | 最大48万円 |
| 処遇改善手当(区分3・リーダー) | 約5,000円 | 約6万円 |
| 役職手当(主任) | 10,000〜30,000円 | 12万〜36万円 |
| 家賃補助(自治体制度) | 最大82,000円 | 最大約98万円 |
| 夜勤手当 | 1回3,000〜8,000円 | 月4回で14万〜38万円 |
| 通勤手当 | 実費(上限あり) | 園により異なる |
このように、手当の内容を把握してフル活用するだけで年間数十万円単位の差が生まれます。転職時には月給の額面だけでなく、これらの手当をトータルで比較することが非常に重要です。
見落としやすい手当・制度
意外と知られていない手当や制度をピックアップして紹介します。
保育士就職準備金貸付制度
新たに保育士として就職する方や、ブランクから復帰する方を対象に、最大40万円の準備金が無利子で貸し付けられる制度です。2年間勤務を継続すると返済が全額免除されるケースが多いため、実質的な支給金と同等の効果があります。
未就学児を持つ保育士への保育料軽減
一部の自治体では、保育士として働く方の子どもの保育料を軽減・免除する制度を設けています。子育て中の保育士にとっては大きな経済的メリットがあるので、お住まいの自治体の制度を確認してみてください。
被服手当・給食手当
エプロンや外靴などの被服費を補助する手当や、園内で給食を食べる場合の費用補助を行う園もあります。月額は少額ですが、年間で見るとそれなりの金額になります。
まとめ
保育士が受け取れる手当は、処遇改善手当・役職手当・夜勤手当・住宅手当・自治体の独自手当など多岐にわたります。自分がどの手当の対象になっているかを把握し、もらい損ねがないか確認することが大切です。
特に自治体独自の家賃補助や奨学金返済支援は、知っているかどうかで年間数十万円の差が出る可能性があります。転職を検討する際にも、手当の充実度は重要な比較ポイントです。
処遇改善加算の詳しい内容については処遇改善加算の解説、家賃補助の具体的な条件は家賃補助制度まとめもあわせてご覧ください。
参考リンク:こども家庭庁、独立行政法人 福祉医療機構



