「がんばって働いているのに、給料がなかなか上がらない」「転職以外に年収を上げる方法ってないの?」――多くの保育士が抱える切実な悩みです。
保育業界は公定価格制度のもとで運営されているため、一般企業のように業績次第で大幅昇給とはいきません。しかし、工夫次第で年収を数十万円単位でアップさせることは可能です。
この記事では、今の園でできる方法から転職によるアップまで、具体的な収入アップ術を幅広く紹介します。

キャリアアップ研修を受講して手当を増やす
年収アップの手段として最も確実性が高いのが、キャリアアップ研修の受講です。研修を修了して所定の役職に就くことで、毎月の手当が加算されます。
対象となる役職と手当額
| 役職 | 要件 | 月額手当の目安 |
|---|---|---|
| 職務分野別リーダー | 経験3年以上+研修修了 | 約5,000円 |
| 専門リーダー | 経験7年以上+研修4分野以上修了 | 最大40,000円 |
| 副主任保育士 | 経験7年以上+研修4分野以上修了+マネジメント研修修了 | 最大40,000円 |
副主任や専門リーダーになれば、年間で最大48万円のアップが見込めます。研修は都道府県やこども家庭庁が主催しており、受講料は無料のケースがほとんどです。
研修で学べる8分野
- 乳児保育
- 幼児教育
- 障害児保育
- 食育・アレルギー対応
- 保健衛生・安全対策
- 保護者支援・子育て支援
- マネジメント
- 保育実践
処遇改善手当の受給状況を確認する
意外と見落としがちなのが、自分が処遇改善手当をきちんと受け取れているかどうかの確認です。
給与明細をチェックする
処遇改善手当は基本給とは別の項目で支給されていることが多いです。給与明細に「処遇改善手当」「特殊勤務手当」などの名目があるか確認してみてください。もし記載がなく、かつ基本給にも反映されていない場合は、園に問い合わせましょう。
園の配分方法を理解する
処遇改善加算は国から園に支給されますが、個々の職員への配分方法は園に委ねられています。一部の園では管理職に偏った配分を行っているケースもあるため、配分の透明性が保たれているか確認することが大切です。
管理職(主任・副園長・園長)を目指す
長期的な年収アップを目指すなら、管理職への昇格が有力なルートです。
管理職の年収目安
| 役職 | 年収の目安 |
|---|---|
| 一般保育士 | 約350万〜420万円 |
| 主任保育士 | 約420万〜500万円 |
| 副園長 | 約450万〜550万円 |
| 園長 | 約500万〜700万円 |
園長になれば年収600万円を超えることも可能です。ただし、管理職は責任が重く、保護者対応や経営面の業務も増えるため、やりがいと負担のバランスを考えたうえで判断することが大切です。

給与水準の高い施設に転職する
今の園での昇給に限界を感じたら、転職によって年収アップを実現するのも有効な手段です。
公立保育園を狙う
公立保育園は地方公務員の俸給表に基づいて給与が決まります。経験年数に応じた定期昇給があり、ボーナスも年間4か月分以上が支給されるのが一般的です。ただし、公務員試験の合格が必要で、年齢制限があることも多い点は注意しましょう。
企業内保育所を選ぶ
大手企業が運営する保育所は、福利厚生や給与水準が一般の保育園より高い傾向にあります。企業の従業員と同等の待遇を受けられるケースもあります。
自治体独自の手当が充実した地域で働く
東京都は「保育士等キャリアアップ補助金」として独自の上乗せ支給を行っており、月額数万円の上乗せが実現しています。家賃補助制度がある自治体も多く、実質的な手取りを大幅に増やせます。
転職時の給与交渉のコツ
- 現在の年収(源泉徴収票)を提示して交渉する
- キャリアアップ研修の修了証を見せて加算を要求する
- 経験年数に基づく号俸の引き継ぎを確認する
- 転職エージェントに条件交渉を代行してもらう
資格を追加取得して市場価値を上げる
保育士資格に加えて関連資格を持っていると、転職時の交渉力が上がります。
おすすめの関連資格
- 幼稚園教諭免許:認定こども園で働ける幅が広がる
- 保育心理士:子どもの心理面のケアに対応可能
- 食育関連資格:食育に力を入れている園で重宝される
- リトミック指導員:音楽教育のスキルとしてアピール可能
- チャイルドマインダー:少人数保育のスキルを証明できる
これらの資格は、直接的な給与アップに結びつくとは限りませんが、より条件の良い求人に応募できる幅を広げる効果があります。
副業で収入源を増やす
就業規則で副業が認められている場合は、資格やスキルを活かした副収入を検討するのも一つの方法です。
保育士経験を活かせる副業
- ベビーシッター(休日や夜間に活動)
- 保育関連のWebライティング
- 保育教材の作成・販売
- 子育て相談のオンラインカウンセリング
公立保育園(公務員)の場合は、原則として副業が禁止されています。私立でも就業規則で制限されていることがあるので、必ず確認してから始めてください。

年収アップのための行動プラン
ここまでさまざまな方法を紹介してきましたが、「何から手をつければいいかわからない」という方のために、優先度の高い順に行動プランを整理します。
ステップ1:まず給与明細を確認する
処遇改善手当がきちんと支給されているか確認しましょう。手当の名目がなく、基本給にも変動がなければ、園の管理者に配分方法を聞いてみてください。これだけで月額数千円〜数万円の改善につながる可能性があります。
ステップ2:キャリアアップ研修に申し込む
受講料無料で、修了すれば月額最大40,000円の手当が加算される可能性があります。都道府県やこども家庭庁の研修スケジュールを確認して、早めに申し込みましょう。人気の日程はすぐに埋まるので注意が必要です。
ステップ3:自治体の独自制度を調べる
家賃補助や奨学金返済支援など、知っているかどうかで年間数十万円の差がつく制度があります。お住まいの自治体や勤務先の自治体のホームページで確認してみてください。
ステップ4:転職市場をチェックする
今すぐ転職するつもりがなくても、他の園の求人を見て相場感を把握しておくことは重要です。「自分の年収は業界の中で低い方だ」と気づくことが、行動のきっかけになることもあります。
年収アップの成功パターン
実際に年収アップを実現した方に多いパターンを紹介します。
パターン1:キャリアアップ研修 → 副主任昇格
研修を4分野以上修了して副主任に昇格し、月額40,000円(年間48万円)の手当が加算。経験7年目で年収が350万円から398万円に上がったケースです。
パターン2:私立 → 公立への転職
年収370万円の私立保育園から、公務員試験を受けて公立保育園に転職。初年度から年収420万円以上になり、その後も定期昇給でコンスタントに上がっていくパターンです。
パターン3:地方 → 東京への転職
地方で年収340万円だった方が、東京都の家賃補助制度を利用して転職。月給は25万円でも家賃補助が月額82,000円つくことで、実質的な手取りが大幅にアップしたケースです。
パターン4:副業で月3万円の副収入
休日にベビーシッターとして活動し、月に3万円の副収入を得ているパターンです。年間36万円の上乗せは、ボーナス1回分に相当する金額です。本業のスキルがそのまま活かせるため、新たにスキルを学ぶ必要がないのがメリットです。
Q&A|保育士の年収アップに関するよくある質問
Q. 転職せずに今の園で年収を上げることはできますか?
可能です。キャリアアップ研修の受講で月額手当を増やす方法や、処遇改善手当の受給状況を確認する方法があります。園との交渉で昇給を勝ち取るケースもあります。
Q. 保育士で年収500万円は現実的ですか?
主任以上の管理職になれば年収500万円は十分に現実的です。公立保育園の園長クラスでは600万〜700万円に達することもあります。
Q. 転職回数が多いと年収アップに不利ですか?
短期間での頻繁な転職は印象が良くありませんが、正当な理由がある転職であれば問題ありません。転職のたびにスキルや経験の幅が広がっていることをアピールできれば、年収アップの交渉材料になります。
Q. パートから正社員になると年収はどのくらい上がりますか?
パートでフルタイム勤務(時給1,300円・月160時間)の場合は年収約250万円ですが、正社員になるとボーナスが加わるため、年収350万〜400万円に跳ね上がるケースが一般的です。正社員登用制度のある園を探すのがおすすめです。
Q. 処遇改善手当の配分に不満がある場合はどうすればいいですか?
まずは園の管理者に配分の根拠を確認しましょう。改善されない場合は、自治体の保育課に相談することもできます。経営情報の「見える化」が進んでいるため、不透明な配分は是正される方向に向かっています。
まとめ
保育士の年収を上げる方法は一つではありません。キャリアアップ研修の受講、管理職への昇格、給与水準の高い施設への転職、資格の追加取得、副業など、複数の選択肢を組み合わせることで、着実に収入を増やしていけます。
まずは自分の給与明細を確認して、処遇改善手当が適切に支給されているかチェックするところから始めてみてください。
キャリアアップの全体像については管理職へのキャリアパス、処遇改善制度の詳細は処遇改善加算の解説もご覧ください。
参考リンク:こども家庭庁、厚生労働省 賃金構造基本統計調査



