保育士試験の合格率は約20〜30%と言われており、「難しい」という印象を持つ方は多いだろう。しかし、この数字だけで判断するのは早計だ。合格率が低い理由を正しく理解すれば、対策の立て方が見えてくる。
この記事では、保育士試験の合格率の推移や、合格率が低い理由、他の国家資格との難易度比較まで、データをもとにわかりやすく解説していく。「自分にも合格できるのか」を判断する材料にしてほしい。

保育士試験の合格率の推移
保育士試験の合格率は年度によって変動するが、ここ数年は約20〜30%の範囲で推移している。直近のデータを見てみよう。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和2年度 | 約44,900人 | 約10,900人 | 約24.2% |
| 令和3年度 | 約83,200人 | 約16,600人 | 約20.0% |
| 令和4年度 | 約67,000人 | 約20,000人 | 約29.9% |
| 令和5年度 | 約66,600人 | 約18,000人 | 約26.9% |
| 令和6年度 | 約58,800人 | 約15,500人 | 約26.3% |
(出典:全国保育士養成協議会の試験データをもとに概数で記載)
合格率は年度によって20%〜30%とばらつきがある。令和3年度は約20%と低めだったが、令和4年度は約30%と高めに推移している。試験の難易度は毎年一定ではないが、しっかり勉強していればどの年度でも合格を目指せるレベルだ。
合格率が低い理由
保育士試験の合格率が20〜30%と低めなのには、いくつかの理由がある。
理由1:9科目すべてで6割以上が必要
保育士試験の筆記試験は全9科目。すべての科目で100点満点中60点以上を取らなければ合格にならない。たとえ8科目で満点を取っても、1科目でも60点に届かなければ不合格だ。
この「全科目クリア」のハードルが、合格率を押し下げている大きな要因だ。
理由2:出題範囲が広い
9科目の試験範囲は、保育原理、心理学、社会福祉、栄養学、音楽理論など非常に幅広い。専門分野がまったく異なる科目を同時に勉強する必要があるため、準備には時間がかかる。
範囲の広さに対応するには、9科目を1冊で見渡せる市販のテキストを軸にするのが効率的だ。法改正に対応した最新年度版かどうかを確認してから選ぼう。
理由3:十分な準備なしに受験する人がいる
保育士試験は科目別合格制度があるため、「今回はとりあえず何科目か合格できればいい」というスタンスで受験する方も少なくない。全科目の合格を初めから狙っていない受験者も含まれるため、見かけの合格率は低くなる傾向がある。
理由4:教育原理と社会的養護の「ニコイチ」ルール
教育原理と社会的養護はセットで同じ回に合格しなければならない(片方だけ合格しても科目免除にならない)。この2科目は出題数が10問ずつと少なく、1問のミスが大きく響くため、ここで足を引っ張られるケースが多い。

実技試験の合格率
筆記試験に合格すると、約2か月後に実技試験がある。実技試験の合格率は筆記試験よりもかなり高く、約80〜90%と言われている。
実技試験は「音楽」「造形」「言語」の3分野から2分野を選択し、各50点満点中30点以上で合格。完璧な技術よりも「保育士としての適性」が見られるため、しっかり練習すればクリアできるレベルだ。
選んだ2分野の課題や評価のポイントは、実技試験に特化した市販の対策本で確認しておくと、練習の方向性を決めやすい。
つまり、筆記試験さえ突破できれば、合格はかなり近いということになる。勉強の労力は筆記試験対策に集中させるのが正解だ。
他の国家資格と難易度を比較
保育士試験の難易度を、他の国家資格と比較してみよう。
| 資格名 | 合格率の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 保育士 | 約20〜30% | 9科目すべて6割以上。科目別合格制度あり |
| 介護福祉士 | 約70〜80% | 実務経験ルートが主流。合格率は高め |
| 社会福祉士 | 約30〜35% | 保育士と同程度の難易度 |
| 宅地建物取引士 | 約15〜18% | 保育士より合格率は低い |
| 登録販売者 | 約40〜50% | 保育士より取りやすい |
| 行政書士 | 約10〜15% | 保育士よりかなり難しい |
保育士試験の難易度は、国家資格のなかでは中程度に位置する。宅建士や行政書士に比べれば取りやすく、介護福祉士や登録販売者に比べれば難しいというポジションだ。
ただし、科目別合格制度を活用すれば3年かけて合格できるため、実質的なハードルはさらに下がる。
一発合格は現実的?平均何回で合格する?
厚生労働省の調査(平成30年度実施)によると、合格者の受験回数は以下のとおりだ。
| 受験回数 | 割合 |
|---|---|
| 1回(一発合格) | 約15% |
| 2回 | 約33% |
| 3回 | 約22% |
| 4回以上 | 約30% |
2回目で合格した方が最も多い(約33%)。次いで3回目が約22%、一発合格は約15%だ。つまり、7割以上の方が3回以内で合格している。
科目別合格制度を前提に「2〜3回で全科目をクリアする」という計画で挑めば、無理のないペースで合格を目指せるということだ。
どの回でどの科目を取るかは、スタディプランナーに書き出して管理しておくと、合格済み科目の有効期限も含めて見通しを立てやすくなる。

前期と後期、どちらが有利?
保育士試験は年2回(前期・後期)実施される。「前期と後期で難易度に差はあるのか」はよく聞かれる質問だ。
結論としては、大きな差はない。令和5年度のデータでは、前期の合格率が約27.9%、後期が約26.3%とほぼ同水準だ。年度によって前期が高い場合も後期が高い場合もあるため、「どちらが簡単」とは言えない。
自分のスケジュールに合わせて、十分な準備期間が確保できる回を選ぼう。どちらの試験を受けるか迷ったら、全国保育士養成協議会の公式サイトで試験日程を確認して、逆算して準備を始めるのがおすすめだ。
科目別の難易度
9科目のなかでも、科目ごとに難易度に差がある。一般的に難しいとされる科目と比較的取りやすい科目を整理しておこう。
難しいと感じる方が多い科目
- 社会福祉:出題範囲が非常に広い。福祉制度全般の知識が求められる
- 教育原理:10問しかなく、1問のミスが重い。人名と理論の暗記が多い
- 社会的養護:教育原理とセットで合格が必要。出題数10問のプレッシャー
- 子ども家庭福祉:法律と制度の正確な暗記が必要
人名・理論・法律の暗記が多い科目は、スキマ時間に回せる一問一答形式の問題集があると取り組みやすい。こちらも最新年度版を選ぶのが基本だ。
比較的取りやすい科目
- 保育原理:保育の基本的な考え方が中心。テキストの内容をしっかり理解すれば得点源にできる
- 保育の心理学:身近な内容が多く、興味を持ちやすい
- 子どもの食と栄養:日常生活の知識が活かせる部分がある
科目の難易度は個人差が大きい。保育の現場経験がある方なら「保育原理」「保育実習理論」は楽に感じるかもしれないし、法律の勉強に慣れている方なら「社会福祉」も得意科目になり得る。自分の得意・苦手を早めに把握することが大切だ。
合格率を上げるための戦略
戦略1:苦手科目に重点的に時間を配分する
得意科目に時間をかけすぎず、苦手科目を「6割ギリギリでもクリアする」レベルに引き上げることに注力しよう。全科目で高得点を目指す必要はない。各科目60点以上を確実に取ることが最優先だ。
戦略2:科目別合格制度をフル活用する
9科目を一度にクリアするのが難しければ、2〜3回に分けて受験する計画を立てよう。1回目で5〜6科目、2回目で残りの科目、という段階的なアプローチが現実的だ。
戦略3:過去問を最低3回転させる
過去問を繰り返し解くことで出題パターンに慣れ、時間配分の感覚もつかめる。3回転させれば、ほとんどの問題に対応できるようになるはずだ。
繰り返し解く過去問題集は、解説が丁寧なものを選ぶと間違えた理由まで理解しやすい。古い年度の問題は法改正で答えが変わっていることがあるので、最新年度版を使おう。
戦略4:法改正と最新動向をチェックする
保育士試験では法律の改正内容が出題されることがある。最新のテキストを使い、試験直前期にはこども家庭庁の保育関連ページで最新情報を確認しておこう。
よくある質問(Q&A)
Q. 合格率は年々上がっている?下がっている?
年度による変動はあるが、全体としては横ばいだ。令和4年度が約30%と高めだったのは、試験内容の難易度や受験者層の変化が影響していると考えられる。劇的に簡単になったり難しくなったりしている傾向はない。
Q. 社会人でも合格できる?
もちろん可能だ。受験者の多くは社会人で、仕事をしながら勉強して合格している方は大勢いる。1日1〜2時間の勉強を6か月程度続ければ、十分合格を狙えるレベルだ。
Q. 不合格でもデメリットはない?
不合格のデメリットは「受験手数料(12,700円)がかかる」「勉強した時間が延びる」程度で、履歴書に不合格歴が残るようなことはない。合格した科目は3年間有効なので、不合格でも積み上げは無駄にならない。
Q. 合格率が高い勉強法は?
独学でも通信講座でも、合格のカギは「過去問の繰り返し」と「苦手科目の重点対策」だ。特に通信講座を利用した方は独学より短期間で合格する傾向があるとされている(各通信講座のデータによる)。
Q. 保育士試験は今後もっと難しくなる?
合格率の推移を見る限り、劇的に難化する兆しはない。ただし、法改正や制度変更に対応するため、試験内容は毎年少しずつアップデートされている。最新のテキストを使い、法改正情報をチェックしていれば過度に心配する必要はない。
Q. 受験回数に制限はある?
受験回数に上限はない。何度でもチャレンジできるので、一度不合格になっても諦める必要はまったくない。合格した科目は3年間有効なため、着実に科目数を減らしていけばいずれ全科目クリアに到達できる。
まとめ
保育士試験の合格率は約20〜30%で推移しており、決して簡単な試験ではない。しかし、合格率が低い理由は「9科目すべて6割以上」というルールや、十分な準備なしに受験する層がいることが大きい。しっかり対策すれば、合格は十分に手が届く資格だ。
科目別合格制度を活用すれば、2〜3回の受験で合格する方が7割以上を占めている。一発合格にこだわらず、計画的に挑戦していこう。
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