「保育の現場を離れて何年も経つけど、また戻りたい」「でも今の保育についていけるか不安……」そんな悩みを抱えている潜在保育士は、実はかなり多い。厚生労働省の調査によると、保育士資格を持ちながら保育の仕事をしていない潜在保育士は全国に約110万人いるとされている。
でも安心してほしい。今は国や自治体、民間の企業が復職支援研修をたくさん用意していて、ブランクがある保育士でも無理なく現場に戻れる環境が整ってきている。
この記事では、ブランクのある保育士が復職する前に受けておきたい研修の種類や選び方、活用できる支援制度について詳しく紹介する。「もう一度保育の仕事がしたい」と思っているなら、ぜひ最後まで読んでほしい。

保育士向け復職支援研修とは?
復職支援研修とは、保育の現場を離れていた保育士が最新の保育知識やスキルを学び直すための研修プログラムです。国や都道府県、市区町村の自治体のほか、保育関連の民間企業やNPOが主催しているケースもあります。
研修の目的は大きく3つあります。
- ブランク期間中に変わった保育制度や法令の最新情報をキャッチアップする
- アレルギー対応や発達支援など、現場で求められるスキルを再習得する
- 実技演習を通じて保育の感覚を取り戻す
参加費が無料の研修も多いのが特徴で、特に自治体が主催する研修は基本的に費用がかかりません。「お金をかけずに学び直したい」という方にはありがたい環境が整っています。
復職支援研修で学べる主な内容
復職支援研修のカリキュラムは主催者によって異なりますが、多くの研修で共通して取り扱われるテーマを紹介します。
保育制度の最新動向
子ども・子育て支援新制度の改正内容、こども家庭庁の設立による変更点など、ブランク中に変わった法制度を体系的に学べます。配置基準の変更(4・5歳児の配置基準が30:1から25:1へ見直し)など、現場に直結する制度変更もカバーされています。
研修の前に、保育の基本となる保育所保育指針の解説書に目を通しておくと、ブランク中に変わった考え方を整理しやすくなります(改定に対応した版かを確認して選びましょう)。
アレルギー対応と食育
アレルギーを持つ子どもへの対応は年々厳格化しています。エピペンの使い方やアレルギー児への給食対応、保護者との連携方法など、命に関わるスキルを実践的に学ぶことができます。
発達支援・障害児保育
発達障害への理解や気になる子への対応は、現在の保育現場では欠かせないスキルです。インクルーシブ保育の考え方や、個別支援計画の作成方法なども研修で取り扱われることが多いです。
安全管理・危機対応
SIDS(乳幼児突然死症候群)対策やヒヤリハット報告の書き方、不審者対応訓練など、保育の安全に関する最新の知識とスキルを習得できます。
ICT活用と業務効率化
保育ICTシステムの導入が進んでいるため、タブレットを使った連絡帳アプリや登降園管理システムの操作など、デジタルツールの基本的な使い方を学べる研修も増えています。

研修の種類と特徴を比較
復職支援研修にはいくつかのタイプがあり、自分の状況に合わせて選ぶことが大切です。
自治体主催の研修(無料が多い)
都道府県や市区町村が主催する復職支援研修は、参加費無料のケースがほとんどです。東京都では「保育のしごと.net」を通じて就職支援研修や就職相談会が定期的に開催されており、最新の保育制度や実技演習を含む充実した内容が特徴です。各自治体のホームページやハローワークで開催情報を確認できます。
保育士・保育園支援センターの研修
全国の保育士・保育園支援センターでは、潜在保育士向けにセミナーや職場体験を実施しています。実際の保育園での見学や体験保育がセットになっている場合もあり、研修だけでは得られない現場の雰囲気を肌で感じることができます。
民間企業・NPOの研修
保育関連の人材サービス企業やNPOが開催する研修もあります。有料のケースもありますが、より実践的な内容やオンラインで受講できるプログラムが充実しているのが特徴です。自宅にいながら学べるeラーニング型の研修は、小さな子どもがいて外出しにくい方にも向いています。
キャリアアップ研修の活用
復職後のキャリアアップを見据えるなら、保育士等キャリアアップ研修の受講も選択肢に入ります。乳児保育、幼児教育、障害児保育など8つの分野があり、各分野15時間以上の研修が国の規定で定められています。研修修了が処遇改善加算の要件にもなるため、収入アップにもつながります。
どの分野を受講するか迷う場合は、分野ごとの内容がまとまったキャリアアップ研修のテキストを事前に眺めておくと、自分に必要な分野を選びやすくなります。
研修の選び方のポイント
数ある研修の中から、自分に合ったものを選ぶための基準を紹介します。
- ブランク期間:3年以内なら制度変更のキャッチアップ中心の短期研修で十分。5年以上なら実技を含む総合的な研修がおすすめ
- 受講形式:対面・オンライン・eラーニングなど、自分のライフスタイルに合った形式を選ぶ
- 費用:まずは自治体の無料研修から始め、必要に応じて民間の有料研修を検討する
- 実技の有無:座学だけでなく、実際に子どもと関わる実技演習があると現場復帰への自信がつきやすい
- 就職支援の有無:研修後の就職相談や求人紹介までサポートしてくれるプログラムなら効率的
復職前に活用できる支援制度
研修のほかにも、復職を後押しする制度がいくつかあります。知らないと損してしまうこともあるため、しっかり確認しておきましょう。
保育士修学資金貸付制度
自治体によっては、潜在保育士の復職を促進するために再就職準備金の貸付制度を設けています。上限は自治体によって異なりますが、一定期間勤務すれば返還が免除されるケースもあります。再就職に必要な費用をカバーできるため、経済的な不安を軽減してくれます。
保育所復帰支援金
保育士資格を持ちながら保育の仕事に就いていない潜在保育士が、認可保育所や認定こども園などに再就職した場合に支援金を受け取れる制度です。自治体ごとに金額や条件が異なるため、お住まいの地域の情報をチェックしてみてください。
ハローワークの職業訓練
ハローワークでは保育士向けの職業訓練が実施されることがあります。雇用保険の受給資格がある場合は、訓練期間中に手当を受けながら学ぶことも可能です。

研修を受けた後にやるべきこと
研修を受けて知識をアップデートしたら、次は実際の復職に向けたアクションに移りましょう。
園の見学やボランティアに参加する
研修で学んだ知識を、実際の現場で確認する機会を作ることが大切です。園見学やボランティアを通じて現場の空気感をつかめば、「やっていけそう」という自信がわいてきます。保育士・保育園支援センターで紹介してもらえることもあるため、問い合わせてみてください。
子どもと関わる場に出る前に、手遊びの本で定番のネタをいくつか思い出しておくと、最初の一歩が踏み出しやすくなります。
自分に合った働き方を選ぶ
最初からフルタイム正社員で復職する必要はありません。パートや派遣、保育補助など、無理のない働き方からスタートして、徐々にペースを上げていくのも賢い方法です。小規模保育園や院内保育所は少人数制で落ち着いた環境のため、ブランク明けの方にも人気があります。
転職サイトやエージェントを活用する
保育士専門の転職サイトやエージェントでは、ブランクOKの求人を絞り込んで検索できます。「ブランク歓迎」「研修制度充実」などの条件で探すと、復職者を積極的に受け入れている園が見つかりやすいです。
Q&Aコーナー
Q. ブランクが10年以上ありますが、研修を受ければ復職できますか?
復職は十分に可能です。10年以上のブランクがある場合は、総合的な復職支援研修を受けた後、パートや保育補助からスタートすることをおすすめします。現場感覚は実際に働くことで戻っていくため、最初から完璧を求めなくて大丈夫です。
Q. 研修はどこで探せばいいですか?
最も手軽なのは、お住まいの自治体のホームページや保育士・保育園支援センターのサイトを確認する方法です。「○○県 保育士 復職支援研修」で検索すると、開催予定の研修がヒットすることが多いです。ハローワークの窓口でも案内してもらえます。
Q. 研修中に子どもを預ける場所がないのですが……
一部の研修では託児サービス付きのプログラムもあります。また、オンラインやeラーニング形式の研修なら自宅で受講できるため、子どもの昼寝中や夜間にも学べます。まずは受講形式を確認してみてください。
Q. 研修を受けたら、すぐに働かないといけませんか?
そんなことはありません。研修はあくまで知識やスキルのアップデートの場なので、受講後すぐに就職する義務はありません。自分のペースで準備を進めて、納得できるタイミングで復職すれば大丈夫です。
まとめ
ブランクがある保育士が復職するために、研修の活用はとても効果的な方法です。自治体の無料研修からスタートし、必要に応じてキャリアアップ研修や民間の研修を組み合わせれば、最新の知識とスキルをしっかり身につけた状態で現場に戻れます。
復職準備金や再就職支援金などの経済的サポートも活用しつつ、無理のない働き方で一歩を踏み出してみてください。保育の経験と資格はいくつになっても価値ある武器です。あなたを待っている子どもたちがきっといます。
保育士・保育園支援センターについて詳しく知りたい方は、厚生労働省「保育人材確保」のページも参考にしてみてください。また、こども家庭庁の公式サイトでは最新の保育制度の情報が確認できます。




