書類作成、行事準備、壁面装飾――保育の仕事は「保育時間以外」の業務が多く、残業や持ち帰り仕事に悩んでいる方は少なくありません。しかし、残業の多さは個人の努力だけでなく、園の仕組みで大きく改善できるものです。
この記事では、保育現場の残業が多い原因を分析し、個人でできる工夫と園全体で取り組む対策の両面から具体的な方法を紹介します。「仕方ない」と諦める前に、できることがまだまだあるはずです。
今の働き方を見直すきっかけにしてください。

なぜ保育現場は残業が多いのか
まず、保育現場で残業が発生する主な原因を整理します。原因がわかれば、効果的な対策が見えてきます。
書類業務の負担
日誌、週案、月案、個別指導計画、児童票、連絡帳、行事計画など、書類の種類は膨大です。子どもが在園している時間は保育に集中する必要があるため、書類作成は自然と勤務時間外に回りがちです。
行事準備の負担
運動会、発表会、遠足、季節行事など、年間を通じて行事が多い園では、その準備に膨大な時間がかかります。衣装づくりや大道具・小道具の作成は、勤務時間内に終わることのほうが少ないです。
壁面装飾・製作準備
毎月の壁面装飾の作り替えや、日々の制作活動の材料準備は、地味に時間がかかる作業です。「手作りでなければ」というプレッシャーが、必要以上に時間をかける原因になっていることもあります。
人手不足
慢性的な人手不足により、一人あたりの業務量が増えています。休憩時間が取れない、ノンコンタクトタイム(事務作業時間)が確保できないといった状況が、残業の直接的な原因になっています。詳しくは以下の記事で解説しています。

「前例踏襲」の文化
「毎年こうやっているから」という理由で、効率の悪いやり方がそのまま続いていることがあります。本当に必要な業務かどうか、見直す視点が欠けている園は少なくありません。
個人でできる残業削減テクニック
園全体の仕組みが変わらなくても、個人の工夫で残業時間を減らすことは可能です。
タスクの優先順位をつける
すべての業務を同じ力加減でやろうとすると終わりません。「今日中に必要なもの」「今週中でよいもの」「後回しでも問題ないもの」の3段階に分けて優先順位をつけることで、限られた時間を有効に使えます。
テンプレートを活用する
日誌や週案、おたよりなど、定型的な文書はテンプレートを作っておきましょう。毎回ゼロから書くよりも、テンプレートをベースに必要な部分だけ修正するほうがずっと効率的です。
すき間時間を有効活用する
午睡中の見守りの合間、子どもが自由遊びをしている時間など、短いすき間時間でできる作業を事前にリストアップしておくと、時間の無駄が減ります。
完璧主義を手放す
壁面装飾を作品レベルに仕上げたり、書類の文面を何度も推敲したりする必要はありません。「子どもや保護者にとって十分な品質」を基準にしましょう。
同僚と協力する
行事準備や製作作業は、一人で抱え込まず分担しましょう。得意分野を活かした役割分担ができると、全体の効率が上がります。


園全体で取り組む残業削減策
個人の工夫には限界があります。園として残業削減に取り組むことで、より大きな効果が期待できます。
ICTシステムの導入
保育ICTシステムを導入することで、出欠管理、連絡帳、日誌、写真販売などの業務を大幅に効率化できます。こども家庭庁の「保育所等におけるICT化推進等事業」を利用すれば、導入費用の補助を受けることも可能です。
ノンコンタクトタイムの確保
子どもと接していない「事務作業のための時間」をシフトに組み込むことが重要です。これにより、勤務時間内に書類作成が完了し、残業の必要がなくなります。以下の記事もぜひご覧ください。



行事の見直し
「毎年やっているから」という理由だけで続けている行事がないか、年度末に見直す機会を設けましょう。行事の数を減らす、規模を縮小する、複数の行事をまとめるなどの工夫が有効です。
書類の簡素化
園独自のフォーマットが複雑で時間がかかっている場合は、記入項目の見直しを検討しましょう。本当に必要な情報だけに絞ることで、書類作成の負担を大幅に軽減できます。
壁面装飾のルール見直し
毎月の壁面装飾を義務化するのではなく、子どもの作品を展示する形に変えたり、数か月ごとの更新にしたりする方法もあります。子どもの作品展示のほうが保護者にも好評だったという園も多いです。
- ICTシステムの導入(事務作業の平均83時間短縮のデータあり)
- ノンコンタクトタイムの確保(週に数時間でも効果あり)
- 行事の精選(回数を減らすか規模を縮小する)
- 書類フォーマットの統一と簡素化
持ち帰り仕事をなくすために
残業以上に問題なのが「持ち帰り仕事」です。サービス残業のようなもので、労働時間として認められないことがほとんどです。
持ち帰り仕事の実態
壁面装飾の製作、ピアノの練習、手作りおもちゃの製作、書類の下書きなど、自宅で行っている方も多いです。しかし、持ち帰り仕事は本来あってはならないものであり、園として解消に取り組む責任があります。
持ち帰り仕事をなくすための対策
- 「園内で完結する」を原則とし、持ち帰りが必要な場合は必ず上司に報告するルールを作る
- 製作物は市販品やダウンロード素材を活用する
- 早番・遅番のシフトを活用して事務作業時間を確保する
- 保育補助やパート職員と役割分担を見直す


参考になる外部資料
よくある質問(Q&A)
Q. 残業を減らしたいと園長に提案したいのですが、どう伝えればいいですか?
感情的に「残業が多い」と訴えるのではなく、データに基づいて提案しましょう。「先月の残業時間は合計○時間でした」「ICT導入で○時間短縮できます」と、具体的な数字を示すと説得力が増します。以下の記事で具体的に解説しています。



Q. ノンコンタクトタイムの確保が難しい園です。どうすればいいですか?
まずは週に1〜2時間でも確保できないか、シフトの工夫を園長に相談してみましょう。午睡時間の見守りを交代制にして、一部の職員が事務作業に充てる方法もあります。一気に変えるのは難しくても、少しずつ進めることが大切です。
Q. 残業代が支払われていないのですが、これは違法ですか?
勤務時間外に業務を行っている場合、残業代を支払わないのは労働基準法違反です。まず園に相談し、改善されない場合は労働基準監督署に相談しましょう。持ち帰り仕事についても、業務命令や暗黙の強制がある場合は労働時間として認められる可能性があります。
Q. 効率よく書類を書くコツはありますか?
まず「何を書くか」の項目をリスト化してから書き始めるのが効率的です。いきなり文章を書こうとすると手が止まりがちですが、箇条書きで要点を出してから文章にすると、スムーズに進みます。過去の書類を参考にするのも有効です。
Q. 行事の見直しを提案したら「子どものために手を抜くのか」と言われました。
行事を見直すことは「手を抜く」ことではなく、「より良い保育のために時間を使い直す」ことです。職員が疲弊していては質の高い保育はできません。「行事準備に使っていた時間を日々の保育の充実に充てたい」と伝えましょう。
- 残業を減らすことと手を抜くことは違う。効率化と品質維持の両立を目指す
- 一人で改革しようとせず、共感してくれる仲間を見つけてから動くと効果的
- 変化には時間がかかる。焦らず少しずつ進める姿勢が大切
まとめ
保育現場の残業問題は、個人の努力だけでは解決しきれません。しかし、「何が残業の原因になっているか」を把握し、一つひとつ対策を講じることで、改善につなげることができます。
テンプレートの活用やタスクの優先順位づけなど、個人でできることから始めつつ、ICT導入や行事の見直しなど園全体の取り組みも提案していきましょう。
働き方が改善されれば、心に余裕が生まれ、子どもたちと向き合う時間の質も向上します。まずは「なぜ残業しているのか」を振り返るところから、始めてみてください。


