「配置基準が変わったって聞いたけど、実際に現場はどう変わるの?」「うちの園は対応できているの?」――配置基準の見直しに関する情報は入ってきていても、具体的な影響がイメージしにくいという方は多いのではないでしょうか。
2024年度には76年ぶりとなる4・5歳児の配置基準の改善が実現し、2025年度からは1歳児についても見直しが進んでいます。長年据え置きだった基準がようやく動き出したこの変化は、保育の質に大きな影響を与える出来事です。
この記事では、配置基準の変更内容、現場への影響、そして園として対応すべきポイントまで、わかりやすく解説しています。

保育士の配置基準とは|基本を押さえよう
配置基準とは、子ども何人に対して保育士を何人配置しなければならないかを定めた国の基準のことです。厚生労働省が定めており、認可保育園はこの基準を満たす義務があります。
年齢別の配置基準(記事執筆時点の最新)
- 0歳児:子ども3人に対して保育士1人
- 1歳児:子ども6人に対して保育士1人(2025年度から5人に1人へ改善した園への加算措置が新設)
- 2歳児:子ども6人に対して保育士1人
- 3歳児:子ども15人に対して保育士1人(2015年度から加算制度あり)
- 4・5歳児:子ども25人に対して保育士1人(2024年度に30人→25人へ改善)
配置基準の詳細は保育士人材バンク(保育士人材バンク)でも確認できます。
2024年度の大きな変更点|4・5歳児の基準改善
2024年度から、4・5歳児の配置基準が「30人につき保育士1人」から「25人につき保育士1人」に改善されました(HOPPA保育士求人情報サイト)。この基準は1948年に制定されて以来、76年間変わっていなかったものです。
なぜ76年も変わらなかったのか
配置基準の改善には保育士の増員が必要であり、それに伴う財源の確保が課題でした。保育士不足の中で基準だけ引き上げても、現場が対応できないという事情もありました。待機児童問題の解消が優先された時期もあり、「量の確保」と「質の向上」の両立が長年の課題だったのです。
2025年度以降の動き|1歳児の配置改善
2025年度から、1歳児の配置を「子ども5人に保育士1人」へ改善した園に対する「1歳児配置改善加算」が新設されました(園支援システム+バスキャッチ)。配置基準自体は「6人に1人」のまま据え置かれていますが、5人に1人へ改善する園に対して国から追加の費用が支給される仕組みです。
1歳児は歩行が始まり、行動範囲が広がる時期で目が離せない年齢です。6人を1人で見るのはかなりの負担であり、加算措置を活用して5人に改善する園が増えることで保育の安全性と質の向上が期待されています。
1歳児クラスを担当している方や、これから担当する方は、この時期の発達と関わり方をまとめた本を1冊手元に置いておくと、日々の保育の見通しが立てやすくなります。
配置基準の変更が現場に与える影響
ポジティブな影響
- 一人ひとりに目が届きやすくなる:保育士1人あたりの子どもの数が減ることで、丁寧な関わりが可能になります。
- 事故防止につながる:目が行き届く範囲が狭まり、危険な場面への対応が迅速になります。
- 記録・事務作業の時間が確保しやすくなる:小学校連携に必要な記録業務の時間が取りやすくなると期待されています。
- 保育の質が向上する:余裕のある保育ができるようになり、子どもの発達に合わせた柔軟な活動が可能に。
課題・ネガティブな影響
- 保育士の確保が困難:基準を引き上げても、それに見合う人材が確保できなければ現場の負担は変わりません。
- 人件費の増加:保育士の増員には当然コストがかかります。運営費への加算措置はあるものの、十分とは言えない声もあります。
- 「まだ不十分」という現場の声:改善された基準に対して54.5%の施設が「不十分」と回答しているというデータもあります。特に4歳児クラスでは、国の基準よりもさらに少ない配置が理想とされています。

配置基準の対応状況
2024年7月時点のデータでは、3歳児の15対1基準を満たしている施設は全体の96.2%、4・5歳児の25対1基準については94.4%の施設が達成しています。多くの施設がすでに新基準に対応できていることがわかります。
ただし、残りの数%の施設では人材確保に苦戦しており、特に地方や小規模園では新基準への対応が課題となっているケースもあります。
保育士として知っておきたい対応のポイント
自園の配置状況を確認する
まずは自分が働いている園の配置状況が新基準を満たしているか確認しましょう。配置基準に満たない場合は、園長や運営者に現状を伝え、改善を求める声を上げることが大切です。
加算措置の活用状況を確認する
国は配置改善に取り組む施設に対して、運営費の加算措置を設けています。自園がこの加算を適切に活用できているかどうかも把握しておくと良いでしょう。
転職時のチェックポイントにする
転職を考えている方は、応募先の園の配置基準への対応状況を確認することが重要です。国の最低基準をギリギリで満たしている園と、基準以上に手厚く配置している園では、働きやすさに大きな差があります。求人票や園見学の際に確認しましょう。
転職時に確認したい配置関連の質問
- 各クラスの保育士配置はどのくらいですか?
- フリーの保育士(クラス担任以外)は何人いますか?
- 加配(障害児対応等)の保育士は確保されていますか?
- 配置基準の改善にどのように対応していますか?
これらの質問は小さなメモ帳に書いて見学に持っていくと、聞き漏れを防げて、複数の園を比べるときにも役立ちます。
Q&Aコーナー|配置基準に関するよくある質問
Q. 配置基準を下回っている園は違法ですか?
認可保育園の場合、配置基準は満たす義務があります。常態的に基準を下回っている場合は行政指導の対象になります。ただし、急な欠勤等による一時的な不足については、速やかに対応する限り直ちに違法とはなりません。
Q. 認可外保育施設にも配置基準はありますか?
認可外施設にも「認可外保育施設指導監督基準」による配置基準があり、認可園と同等の基準が求められています。ただし、実態としては監査の頻度に差がある場合もあります。
Q. 今後さらなる改善の見通しはありますか?
現時点で具体的なスケジュールは公表されていませんが、現場からは特に2歳児の配置改善を求める声が上がっています。政策の動向を注視しておくことが大切です。
Q. 配置基準を超えた手厚い配置をしている園を見分ける方法は?
園見学の際に「各クラスの保育士の人数」と「フリーの保育士がいるかどうか」を直接質問するのが確実です。また、園のホームページや採用情報に「手厚い配置」「ゆとりのある人員体制」と記載がある場合は、国の基準以上の配置をしている可能性が高いです。
配置基準の変更を受けて保育士ができること
配置改善を前向きに活用する
配置基準が改善されると、一人ひとりの子どもに向き合える時間が増えます。この余裕を活かして、個別の発達記録をこまめにつけたり、子どもとの対話の時間を意識的に確保したりすると、保育の質がさらに向上します。
記録の書き方に自信がない方は、保育記録の書き方を例文つきで解説した本を参考にすると、短い時間でも要点を押さえた記録が書けるようになります。
チームワークの見直し
人数が増えることで「誰が何を担当するか」の役割分担がより重要になります。日々の打ち合わせや情報共有の時間を確保し、チーム全体で保育を進める体制を整えましょう。
自分のキャリアへの影響を考える
配置基準の改善は、保育士の需要増加につながる可能性があります。園側が新たに保育士を採用する動きが活発化すれば、転職市場でも有利に動けるチャンスが生まれます。自分のキャリアプランを見直す良い機会になるかもしれません。
手厚い配置の園は応募が集まりやすいので、良い求人を見つけたらすぐ動けるよう、履歴書と証明写真は先に用意しておくとスムーズです。
他国の配置基準との比較
日本の配置基準は国際的に見てどのような水準にあるのでしょうか。主要国と比較してみましょう。
- イギリス:2歳児は子ども4人に大人1人、3歳児以上は子ども13人に大人1人(教員資格者がいる場合)
- ドイツ:州によって異なりますが、3歳未満は子ども3~5人に1人、3歳以上は子ども7~12人に1人程度
- フランス:2歳以下は子ども5人に大人1人、2歳以上は子ども8人に大人1人
比較すると、日本の配置基準は改善後でも諸外国に比べて保育士1人あたりの子どもの数が多い傾向にあることがわかります。さらなる改善に向けた議論が今後も続くことが予想されます。
配置基準の変更と保育士不足の関係
配置基準の改善は歓迎すべきことですが、保育士不足の問題が同時に解決されなければ、基準を満たすことが困難な園が出てきます。
保育士確保の課題
保育士資格を持っていても、実際に保育の仕事に就いていない「潜在保育士」は全国に多く存在します。給与水準や労働環境が改善されなければ、潜在保育士の復帰は進みません。配置基準の改善と処遇改善はセットで進める必要があるのです。
ICT活用による業務効率化
保育士の人数を増やすだけでなく、ICTを活用して事務作業の負担を減らすことも重要なアプローチです。書類業務や保護者連絡をデジタル化することで、保育士が子どもと向き合う時間を確保する動きが全国的に広がっています。
地域による格差
都市部と地方では保育士の確保状況に大きな差があります。都市部は求人に対する応募が比較的多い一方、地方では慢性的な人材不足に悩む園も少なくありません。配置基準の改善が地域格差を広げないよう、自治体独自の支援策にも注目が集まっています。

まとめ
2024年度に4・5歳児の配置基準が76年ぶりに「30人→25人」に改善され、2025年度からは1歳児を「5人に1人」へ改善した園への加算措置も始まっています。多くの施設がすでに新基準に対応していますが、「まだ不十分」という現場の声も根強くあります。
保育士としては、自園の配置状況を把握し、転職時にも配置体制をチェックポイントに含めることが大切です。配置基準の改善は、保育の質と保育士の働きやすさを同時に高める鍵です。今後の政策動向にも引き続き注目していきましょう。



