「自分の給料って、保育業界の中ではどのくらいの立ち位置なんだろう」「施設を変えたら年収は上がるのかな」――給料の話は職場でなかなか聞けないだけに、気になっている方は多いはずです。
保育士の給与は、施設の種類や雇用形態、地域によって大きな差が出るのが実情です。同じ資格を持って同じ仕事をしていても、年収で100万円以上の違いが出ることも珍しくありません。
この記事では、厚生労働省の統計データを軸に、施設別・雇用形態別・地域別の給与水準を比較していきます。自分の給与が適正かどうかを判断する材料にしてください。

保育士の平均年収データ
まずは全体像を押さえておきましょう。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均年収はおよそ427万円です(全国・全年齢平均)。
基本的な給与構成
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 平均月収(手当込み) | 約27万〜30万円 |
| 平均賞与(年間) | 約80万〜85万円 |
| 平均年収 | 約400万〜440万円 |
| 平均年齢 | 約38歳 |
ここ数年で保育士の給与は着実に上昇しています。処遇改善加算の拡充や慢性的な人手不足を背景に、10年前と比較して60万円以上のアップが実現しています。
手取りの目安
額面月収から社会保険料や税金を差し引いた手取りは、月収27万円の場合でおよそ22万円前後になります。ボーナスの手取りは額面の8割程度が目安です。
施設別の年収比較
同じ保育士でも、働く施設の種類によって年収には差があります。
公立保育園
公立保育園の保育士は地方公務員です。給与は自治体の俸給表に基づいて決まり、経験年数に応じて着実に上がります。ベテランになると年収500万〜600万円に到達することもあります。賞与も年間4か月分以上が支給されるのが一般的で、安定性は群を抜いています。
私立認可保育園
私立認可保育園は運営法人によって給与にばらつきがあります。大手の社会福祉法人は比較的待遇が良い傾向にありますが、小規模な法人では公立に比べて年収が50万〜100万円低いケースも見られます。
企業主導型保育園
企業が運営する保育園は、母体企業の財力によって待遇が大きく異なります。大企業が運営する施設では、正社員並みの福利厚生が受けられることもあります。
小規模保育園
定員19名以下の小規模保育園は、園の規模が小さい分、人件費に充てられる予算も限られがちです。ただし、少人数ならではの温かい保育環境は魅力のひとつです。
院内保育所
病院に併設された保育所は、夜勤手当が加わることで年収が上がるケースがあります。夜勤がある分、手取りは他の施設より多くなることも珍しくありません。

雇用形態別の収入比較
正社員・パート・派遣で、収入はどのくらい違うのかを見ていきます。
正社員(常勤)
フルタイム勤務で、月給制+賞与が基本です。処遇改善手当やキャリアアップ加算の恩恵をフルに受けられるのが強みです。年収は350万〜450万円が中心的なレンジで、管理職になると500万円を超えることもあります。
パート(非常勤)
時給制で、平均時給はおよそ1,370円前後です。週5日フルタイムで働いた場合の年収は約250万〜280万円が目安ですが、実際には週3〜4日勤務の方が多く、年収は150万〜200万円程度になるケースが一般的です。
派遣
時給制で、平均時給はおよそ1,200円〜1,800円です。フルタイムで働いた場合の年収は約280万〜350万円が目安です。ボーナスがない分を時給で補っている形になります。
- 正社員:安定性と昇給が魅力、年収350万〜450万円
- パート:柔軟な働き方、年収150万〜280万円
- 派遣:高時給で残業なし、年収280万〜350万円
経験年数別の年収推移
保育士の年収は、経験を積むにつれて上昇します。その推移を見ていきましょう。
| 経験年数 | 年収の目安 |
|---|---|
| 1〜4年目 | 約310万〜350万円 |
| 5〜9年目 | 約360万〜400万円 |
| 10〜14年目 | 約400万〜440万円 |
| 15年以上 | 約440万〜500万円 |
特に公立保育園では、経験年数に応じた昇給制度がしっかり機能しているため、長く勤めるほど年収が上がりやすい傾向があります。
地域別の年収比較
同じ仕事でも、地域によって年収にはかなりの差があります。
年収が高い地域
首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)は全国平均を大きく上回る傾向があります。東京都では平均年収が440万円前後に達するデータもあります。これは家賃補助制度や自治体独自の処遇改善施策が充実していることも一因です。
地方との差
地方では年収350万円前後にとどまる地域もあります。ただし、生活費(特に家賃)が大幅に低いため、実質的な生活水準は都市部と大差がないケースもあります。

全産業平均との比較
保育士の給与が「安い」と言われる背景には、全産業平均との差があります。全産業の平均年収が約450万〜500万円前後なのに対し、保育士は約427万円で、まだ差は存在します。
ただし、この差は年々縮まっています。処遇改善加算の累積効果により、保育士の年収は着実に全産業平均に近づいている状況です。
給与データを見るときの注意点
- 統計データは「平均値」であり、中央値はやや低くなる傾向がある
- 公立保育園と私立保育園では給与体系がまったく異なる
- 処遇改善手当が月給に含まれているかどうかで見え方が変わる
- 地域手当や住宅手当を含むかどうかでも差が出る
年齢別の平均年収
年齢によっても年収に差が出ます。年齢別のデータを見ることで、自分のキャリアステージでの立ち位置がわかります。
| 年齢 | 年収の目安 |
|---|---|
| 20代前半 | 約300万〜340万円 |
| 20代後半 | 約340万〜370万円 |
| 30代 | 約370万〜420万円 |
| 40代 | 約410万〜470万円 |
| 50代以上 | 約450万〜520万円 |
20代のうちは全産業平均と比較して差が大きいですが、40代以降は管理職に就くことで全産業平均に近づいていく傾向があります。特に公立保育園では、定期昇給の恩恵が年齢とともに大きくなります。
処遇改善制度による今後の見通し
国は保育士の給与改善を政策的に推進しており、ここ数年の引き上げ幅は過去と比べても大きなものになっています。人件費の大幅な引き上げが行われ、年収ベースで約20万円以上のアップが実現しています。
さらに今後も継続的な引き上げが予定されており、保育士の年収は着実に上昇トレンドにあると言えます。処遇改善加算の制度が一本化されたことで、配分方法も透明化が進むと期待されています。
年収を上げるために今からできること
データを見て「もう少し年収を上げたい」と感じた方は、以下のアクションを検討してみてください。
- キャリアアップ研修を受講して月額手当の対象になる
- 給与水準の高い施設タイプ(公立・企業内保育所)への転職を検討する
- 自治体独自の手当や家賃補助制度が充実した地域で働く
- 管理職(主任・副園長)への昇格を見据えたキャリア計画を立てる
- 幼稚園教諭免許など関連資格を取得して選択肢を広げる
Q&A|保育士の給与水準に関するよくある質問
Q. 保育士の平均年収は今後も上がりますか?
はい。国は保育士の処遇改善を継続的に進めており、人件費の引き上げが段階的に行われています。今後も上昇する見込みが高いです。
Q. 男性保育士と女性保育士で給料に差はありますか?
制度上の性別による差はありません。ただし、管理職に就く男性保育士の割合がやや高い傾向があるため、統計上は男性の方がやや高く出るケースがあります。
Q. 保育士は副業で収入を増やせますか?
就業規則で副業が禁止されていなければ可能です。ベビーシッターや保育関連のライター業務など、資格や経験を活かした副業をしている方もいます。
Q. 派遣保育士とパート保育士ではどちらが稼げますか?
時給ベースでは派遣の方が高い傾向にあります。派遣の平均時給が約1,200円〜1,800円に対し、パートは約1,100円〜1,500円が相場です。ただし、パートでも処遇改善手当やボーナスが出る園であれば、年収ベースでは逆転するケースもあります。
Q. 認定こども園と保育園ではどちらが年収が高いですか?
一概には言えませんが、認定こども園は幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を持っていることが求められるケースが多く、その分の資格手当が上乗せされることがあります。施設の規模や運営母体によっても異なるため、個別に比較する必要があります。
Q. 保育士の初任給はどのくらいですか?
私立保育園の場合、月給18万〜22万円が初任給の相場です。公立保育園は自治体の俸給表に基づくため、月給20万〜23万円程度が目安になります。地域によっても差があるので、求人票で確認してください。
まとめ
保育士の給与水準は、施設の種類・雇用形態・地域によって大きく異なります。自分の年収が適正かどうかを判断するには、同じ条件(施設の種類、地域、経験年数)で比較することが大切です。
処遇改善制度の恩恵もあり、保育士の年収は着実に上昇しています。今の給与に不満がある方は、施設の種類や地域を変えることで年収アップを実現できる可能性があります。
給与アップの具体的な方法については、給料を上げる方法の記事も参考にしてみてください。
参考リンク:厚生労働省 賃金構造基本統計調査、こども家庭庁



