食物アレルギーのある子どもが増えている中、保育園でのアレルギー対応は命に関わる重要な業務だ。「除去食の管理はどうすればいい?」「もしアナフィラキシーが起きたら、どう対応すべき?」。こうした不安を抱えている保育士は多いはずだ。
この記事では、こども家庭庁(旧厚生労働省)の「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」をベースに、保育園で押さえておくべきアレルギー対応の基本知識と実践的な対応方法を解説していく。正しい知識を身につけて、子どもの安全を守る力をつけていこう。

保育園で多いアレルギーの種類
保育園で対応が求められるアレルギーは、主に以下のものがある。
食物アレルギー
保育園で最も注意が必要なのが食物アレルギーだ。原因食物として多いのは鶏卵、牛乳、小麦の3つで、これらで食物アレルギー全体の大部分を占める。年齢によって原因食物の割合は変化し、年齢が上がるとナッツ類やそば、甲殻類などのアレルギーが増えてくる。
気管支ぜん息
ホコリやダニ、気温の変化などが引き金となり、気道が狭くなって呼吸が苦しくなる。運動後に発作が起きることもあるため、活動量の多い時間帯は特に注意が必要だ。
アトピー性皮膚炎
かゆみを伴う湿疹が繰り返しできる慢性的な皮膚疾患だ。保育園では、汗をかいた後の対応や保湿ケア、プール活動時の配慮などが求められる。
アレルギー性鼻炎・結膜炎
花粉やハウスダストが原因で、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどの症状が出る。園生活に大きな支障はないことが多いが、症状がひどい場合は活動の調整が必要なケースもある。
アレルギー対応の基本原則
保育園でのアレルギー対応には、守るべき基本原則がある。
- 医師の診断に基づく「生活管理指導表」の提出を保護者に求める
- 除去食対応は「完全除去」を基本とする(少量なら食べさせる等の自己判断は禁止)
- 園全体で情報を共有し、対応方法を統一する
- 緊急時の対応手順を全職員が理解・訓練しておく
生活管理指導表とは
アレルギーのある子どもを受け入れる際に、かかりつけ医が記入する書類だ。アレルギーの原因物質、症状の程度、園での配慮事項などが記載されており、これが園の対応の根拠となる。保護者の自己申告だけで対応を決めるのではなく、医師の指示に基づいて対応することが原則だ。
完全除去を基本とする理由
除去食対応では、「少しなら大丈夫」という中途半端な対応が最も危険だ。完全除去を基本とすることで、誤食のリスクを減らし、対応のブレを防ぐことができる。解除する場合も医師の指示のもと、段階的に進めていく。
園内で対応をそろえるには、保育現場向けのアレルギー対応の本を職員室に置き、ガイドラインとあわせて確認できるようにしておくのもひとつの方法だ。

給食での誤食防止の具体策
食物アレルギーの事故で最も多いのが「誤食」だ。ヒューマンエラーを前提として、二重三重のチェック体制を整えることが重要になる。
調理段階での対策
除去食は一般食とは別の調理器具・食器を使用し、調理から配膳まで一貫して区別する。除去食の調理は、原則として他の食事よりも先に行い、アレルゲンの混入(コンタミネーション)を防ぐ。
配膳時の確認
除去食を提供する際は、以下のようなチェックフローを徹底する。
| 手順 | 内容 | 確認者 |
|---|---|---|
| 1 | 除去食トレイの名前・内容を確認 | 調理員 |
| 2 | 受け渡し時に内容を読み上げて確認 | 調理員 → 保育士 |
| 3 | 配膳前に除去内容と一致しているか確認 | 担任保育士 |
| 4 | 子どもに提供する直前に最終確認 | 担任保育士 |
おかわり・おやつ時の注意
おかわりの際に誤って一般食を提供してしまう事故は少なくない。アレルギーのある子どものおかわりは除去食として別に用意しておくか、おかわり対応の手順を明確にしておく必要がある。おやつの時間も同様に注意が必要だ。
エピペンの使い方と緊急時対応
アナフィラキシーは発症から30分以内の対応が命を左右するとされている。エピペン(アドレナリン自己注射薬)の使い方と緊急時の対応手順は、全職員が把握しておく必要がある。
アナフィラキシーの症状
食物アレルギーの中でも重篤な反応がアナフィラキシーだ。以下の症状が複数同時に出た場合は、速やかに対応が必要となる。
- 皮膚症状:全身のじんましん、赤み、かゆみ
- 呼吸器症状:喉の締め付け感、咳き込み、ゼーゼーした呼吸
- 消化器症状:激しい嘔吐、腹痛
- 循環器症状:顔面蒼白、意識がもうろうとする
上記の症状が見られたら、ためらわずにエピペンを使用し、救急車を要請してください。
エピペンの使い方
エピペンは太ももの外側に注射する。衣服の上からでも使用可能だ。手順は以下の通り。
安全キャップを外す → 太ももの外側にオレンジ色の先端を垂直に押し当てる → カチッと音がするまでしっかり押す → 数秒間そのまま保持する → 抜いて使用済みのエピペンを保管し、救急隊に渡す。
保育士がエピペンを使用することは法的に認められている。「使うべきか迷ったら、使う」が原則だ。使わなかったことによるリスクのほうが、使ったことによるリスクよりもはるかに大きい。

保護者との連携と情報共有
アレルギー対応は、保護者との密な連携が不可欠だ。
入園時の面談
アレルギーのある子どもの保護者とは、入園前に個別面談を行い、アレルギーの詳細、緊急時の連絡先、エピペンの保管場所と使用条件などを確認する。生活管理指導表の提出もこのタイミングで依頼する。
定期的な情報更新
アレルギーの状態は変化することがある。少なくとも年に1回は生活管理指導表の更新を依頼し、除去食の内容を見直す。解除の判断も、かかりつけ医の指示に基づいて行う。
献立表の事前共有
月間の献立表を事前に保護者に渡し、アレルゲンの有無を確認してもらうことで、誤食のリスクをさらに減らすことができる。
家庭でも除去食をどう工夫すればいいか悩む保護者は多い。アレルギー対応レシピの本を話題にするなど、献立の相談に乗れる引き出しを持っておくと連携がスムーズになる。
園全体で取り組む体制づくり
アレルギー対応は個人の努力だけでは不十分で、園としての仕組みが必要だ。
マニュアルの整備
誤食防止の手順、緊急時の対応フロー、関係機関の連絡先などをまとめたマニュアルを作成し、全職員に周知する。マニュアルは年に1回は見直し、内容を最新の状態に保つ。
定期的な研修・訓練
エピペンの使用訓練、誤食事故のシミュレーション、アレルギーに関する基礎知識の研修を定期的に実施する。新しい職員が入った際は、必ず早い段階で研修を行う。
ヒヤリハット事例の共有
「間違って一般食のトレイを渡しそうになった」「おかわりの際にアレルゲンを含む食品を出しそうになった」といったヒヤリハット事例を収集・共有し、再発防止に活かすことが大切だ。
アレルギー対応でありがちなミスと防止策
現場ではどんなに気をつけていても、ヒューマンエラーは起こり得る。ありがちなミスとその防止策を確認しておこう。
配膳間違い
最も多いミスが「一般食と除去食の取り違え」だ。防止策としては、除去食の食器の色を変える、名前と除去内容を記載したプレートをトレイに置く、声出し確認を習慣化するなどが効果的だ。
食器やトレーの色を分ける場合は、一般食と見間違えにくいはっきりした色のトレーを除去食専用として用意しておくとよい。
おやつ・イベント食の見落とし
普段の給食では注意していても、誕生会のケーキやクリスマスの特別メニューなどでつい確認を怠ってしまうケースがある。行事食やおやつも通常の給食と同じチェック体制で管理することが大切だ。
代替職員への引き継ぎ不足
担任が休んだ日に代替の保育士がアレルギー情報を知らなかった、というケースも報告されている。アレルギーのある子どもの情報は、クラスの目につく場所に掲示しておくなど、誰が入っても対応できる仕組みをつくっておこう。
Q&A|アレルギー対応でよくある疑問
Q. アレルギーのない子に配慮して、クラス全体で特定の食材を使わないのはあり?
園の方針によるが、給食で特定のアレルゲンを全体から除去する「クラス単位除去」を採用する園もある。ただし、栄養バランスの観点から、除去する食材の範囲は慎重に検討する必要がある。
Q. 保育士がエピペンを打って副作用が出たらどうなる?
エピペンの使用はアナフィラキシーの緊急対応として医学的に推奨されている行為であり、保育士が使用することも法的に認められている。緊急避難的な行為として、適切な判断に基づく使用であれば責任を問われることはないとされている。
Q. アレルギー対応に不安がある場合、どこに相談すればいい?
自治体の保育課や保健センターに相談するのが一つの方法だ。園の嘱託医にアドバイスを求めることもできる。また、キャリアアップ研修の「食育・アレルギー対応」分野を受講することで、体系的な知識を身につけることも可能だ。
まとめ
保育園でのアレルギー対応は、正しい知識と確実な仕組みの両方があって成り立つ。生活管理指導表に基づく完全除去の原則、誤食防止のための二重三重のチェック体制、そしてエピペンの使用を含む緊急時対応の訓練。この3つを柱として、園全体で取り組むことが子どもの命を守ることにつながる。
アレルギー対応の詳細は、こども家庭庁の保育所におけるアレルギー対応ガイドラインページで確認できる。また、横浜市が公開している食物アレルギー対応マニュアルも、現場向けの具体的な手順が充実しているので参考にしてみてほしい。
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