食物アレルギーを持つ子どもは年々増加傾向にあり、保育園での対応がますます重要になっています。アレルギー対応を誤ると、命に関わる重大な事故につながる可能性があるため、正しい知識と手順の習得は必須です。
この記事では、こども家庭庁の「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」に基づいた対応方法を中心に、現場で実際に役立つ情報をまとめました。「なんとなく知っている」から「正しく対応できる」へステップアップするための内容です。
給食の除去食対応からエピペンの使い方まで、網羅的に解説していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。

食物アレルギーの基本知識
食物アレルギーとは、特定の食べ物に含まれるたんぱく質に対して免疫が過剰に反応することで起こる症状です。保育現場で正しく対応するために、まず基本的な知識を押さえておきましょう。
保育園で多いアレルゲン
保育園で特に注意が必要な食品は以下のとおりです。
- 鶏卵:乳幼児の食物アレルギーで最も多い原因食品
- 牛乳・乳製品:チーズ、ヨーグルト、バターなど幅広い食品に含まれる
- 小麦:パン、うどん、お菓子など使用範囲が広い
- 大豆:醤油や味噌にも含まれるため注意が必要
- ナッツ類:くるみ、カシューナッツなど。少量で重篤な症状が出ることがある
- 甲殻類:エビ、カニなど
特にくるみは2025年4月から食品表示の義務化対象に追加されており、アレルゲンとしての注目度が高まっています。保育園の給食でもしっかり確認が必要です。詳しくは以下の記事で解説しています。

アレルギー症状の段階
食物アレルギーの症状は、軽度から重度までさまざまです。
- 軽度:部分的な蕁麻疹、かゆみ、口の中の違和感
- 中等度:全身の蕁麻疹、腹痛、嘔吐、咳
- 重度(アナフィラキシー):呼吸困難、血圧低下、意識障害。命の危険あり
アナフィラキシーは症状が急速に進行するため、初期対応のスピードが生死を分けることがあります。「おかしいな」と感じた段階ですぐに対応することが大切です。
保育園での給食対応の実際
アレルギー対応給食は、園全体で統一したルールのもとに行う必要があります。属人的な対応はミスの原因になるため、仕組みで防ぐことが重要です。
生活管理指導表の活用
「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」は、医師が記入する書類で、アレルギーの種類や除去が必要な食品、対応の仕方などが記載されています。この指導表に基づいて対応を行うのが大原則です。
保護者から「○○も食べさせないでほしい」と口頭で依頼されることがありますが、医師の指示がない食品まで除去する必要はありません。過剰な除去は子どもの栄養面に悪影響を与える可能性があるため、必ず医師の判断を仰ぎましょう。以下の記事もぜひご覧ください。



除去食対応の手順
除去食を安全に提供するためには、以下の手順を徹底します。
- 献立作成時:栄養士がアレルゲンを含む食品をチェックし、代替食品を検討する
- 調理時:アレルゲンを含む食品と除去食を別の器具・調理台で調理する(コンタミネーション防止)
- 配膳時:専用のトレーや食器を使い、名前とアレルゲン名を記載したカードを添える
- 提供時:担任が対象児の食事内容を口頭で確認してから提供する
- 食事中:他の子どもとの食べ物のやり取りがないか注意する
- おかわりの際にも必ずアレルゲンの確認を行うこと
- 代替食がない場合は、保護者にお弁当持参をお願いする方法もある
- 調理担当と保育担当の間での「ダブルチェック」は省略しないこと
誤食を防ぐための工夫
誤食事故の多くは「うっかりミス」から起こります。ヒューマンエラーを前提に、仕組みで防ぐ体制を整えましょう。
- アレルギー児の食事は色分けされた専用トレーで提供する
- アレルギー児の席を固定し、配膳ルートを決めておく
- おやつも含めて全食品のアレルゲンチェックを行う
- 保護者からの差し入れやイベント時の食品にも注意する
- 職員間の引き継ぎ時にアレルギー情報を必ず伝える


エピペン(アドレナリン自己注射薬)の使い方
エピペンは、アナフィラキシーが疑われるときに使用する緊急用の注射薬です。保育現場でいつでも使えるように準備しておくことが求められます。
エピペンが必要な症状の目安
以下のような症状が1つでも見られたら、エピペンの使用を検討します。
- ぐったりしている、意識がもうろうとしている
- 呼吸が苦しそう、ゼーゼー・ヒューヒューという音がする
- 声がかすれる、声が出にくい
- 繰り返し嘔吐している
- 唇や爪が青白くなっている
エピペンの使い方(手順)
- 青い安全キャップを外す
- 太ももの外側に、オレンジ色のニードルカバー側をカチッと音がするまで押し当てる(衣服の上からでOK)
- そのまま数秒間押し続ける
- 針を抜き、注射部位を10秒ほど軽く押さえる
- すぐに119番通報する
エピペンの使用はためらわないことが最も大切です。「使って何もなかった」よりも「使わなくて手遅れになった」ほうがはるかに深刻です。保育士によるエピペンの使用は、緊急避難として法的にも認められています。
- 保管場所を全職員が把握しておくこと
- 直射日光を避け、常温(15〜30℃)で保管する
- 使用期限を定期的に確認する
- 練習用トレーナーで年に数回は使い方を練習する
アレルギー対応の年間スケジュール
アレルギー対応は入園時だけでなく、年間を通じて継続的に行う必要があります。以下のスケジュールを参考に、計画的に取り組みましょう。
入園前〜入園時
- 入園面談でアレルギーの有無を確認する
- 生活管理指導表の提出を依頼する
- 除去食の対応方法について保護者と打ち合わせる
- 調理担当を含めた園内打ち合わせを行う
年度中
- 月1回:献立のアレルゲンチェックと保護者への確認
- 年2回:エピペン使用の研修・訓練
- 随時:新たなアレルゲンが判明した場合の対応見直し
- 行事前:イベント食のアレルゲン確認と代替対応の準備
年度末
- 次年度への引き継ぎ資料を作成する
- 生活管理指導表の更新を保護者に依頼する
- 進級先の担任への情報共有を行う


アレルギー以外にも注意が必要な疾患
食物アレルギーに加えて、保育園で対応が求められるアレルギー疾患は複数あります。それぞれの基本的な対応を確認しておきましょう。
気管支ぜん息
埃やダニ、カビなどがきっかけで発作が起きることがあります。掃除の徹底、布団の管理、運動時の配慮が重要です。発作時の吸入薬の使い方も事前に保護者と確認しておきましょう。
アトピー性皮膚炎
肌が乾燥しやすく、かゆみが強いのが特徴です。保湿剤の塗布やプールの前後のシャワー対応など、保護者からの依頼に基づいて個別に対応します。
アレルギー性鼻炎・結膜炎
花粉やハウスダストが原因で、くしゃみ、鼻水、目のかゆみが出ます。外遊び後の手洗い・うがいの徹底、布団干しのタイミングなどを配慮します。
参考になる外部資料
アレルギー対応について、さらに詳しく学びたい方は以下の資料を参考にしてください。
よくある質問(Q&A)
Q. アレルギーの子どもが他の子のおやつを食べてしまいました。どうすればいいですか?
まず慌てず、何をどのくらい食べたかを確認します。その食品にアレルゲンが含まれている場合は、症状が出ていなくても最低30分は様子を観察してください。蕁麻疹や咳、嘔吐などが現れたら速やかに対応し、保護者と主治医に連絡します。症状が急激に悪化する場合はエピペンの使用と119番通報を行います。以下の記事で具体的に解説しています。



Q. 保護者から「卵アレルギーだけど少しなら大丈夫」と言われました。園で少量なら食べさせていいですか?
保護者の判断だけで除去を緩和するのは危険です。必ず主治医の指示に基づいた対応を行ってください。生活管理指導表に「少量は可」と記載がある場合のみ、園長と相談のうえ対応を検討します。保護者には「医師に確認していただけますか」とお伝えしましょう。
Q. エピペンを打つタイミングがわかりません。どう判断すればいいですか?
「迷ったら打つ」が基本方針です。アナフィラキシーの症状は急速に進行するため、判断に迷っているうちに悪化する危険があります。エピペンを打ったあとに症状が軽かったとしても、医学的な問題にはなりません。打たなかったことで取り返しがつかなくなるリスクのほうがはるかに大きいです。
Q. アレルギーのある子どもの保護者から差し入れをもらいました。他の子に配布してもいいですか?
他の子どもにアレルゲンが含まれている可能性があるため、原材料を必ず確認してください。手作りの食品は原材料が不明確な場合が多いので、園の方針として「配布は控えさせていただいています」と統一的に対応するのが安全です。
Q. 食物アレルギーの子どもが園で過ごすうえで、食事以外に注意すべきことはありますか?
制作活動で小麦粘土や卵の殻を使うこと、牛乳パックを使った工作なども要注意です。肌に触れるだけで症状が出る子もいます。また、石鹸やハンドクリームの成分にも注意が必要です。活動前に使用する材料のアレルゲンチェックを行いましょう。


まとめ
保育園でのアレルギー対応は、子どもの命を直接守る重要な業務です。生活管理指導表に基づいた対応を基本とし、園全体でダブルチェック体制を整えることが事故防止の鍵になります。
エピペンの使い方を含めた緊急時の対応を全職員が把握し、定期的な訓練を行うことで、いざというときに迷わず動ける体制を作りましょう。
「確認しすぎて困ることはない」。アレルギー対応においては、慎重すぎるくらいがちょうどいいのです。一人ひとりの子どもの安全を守るために、チーム全体で取り組んでいきましょう。


